waltz 2013

総合演出・映像:伏木 啓
空間設計・施行:井垣 理史
企画・運営:木田 歩

2013年11月08日[金]〜11月10日[日] 18:00 – 20:00

会場:中川運河 長良橋北

受付:名古屋市中川区舟戸町6丁目地先

出演:
宇佐美 綾, 大脇 莉奈, 金田 英雄,白石 明梨, 西田 景子, 野々山 碩人, 森本 知之, 山内 康平

主催:中川運河 映像アーカイヴ プロジェクト(名古屋都市センター ARToC10助成採択事業)

後援:名古屋市, 名古屋港管理組合, 公益財団法人名古屋まちづくり公社 名古屋都市センター


協賛:株式会社タイホー


協力:名古屋港漕艇センター, 名古屋学芸大学メディア造形学部

Art direction, Video images: Kei Fushiki
Space design: Masashi Igaki
Project management: Ayumi Kida

Date: Nov.08(fry.) – Nov.10(sun.) 18:00 – 20:00


Venue: The north-side of Nagara-bashi, Nakagawa Canal


Information desk: Funato-chou 6, Nakagawa-ku, Nagoya.

Cast: USAMI Aya, OWAKI Rina, KANEDA Hideo, SHIRAISHI Akari, NISHIDA Keiko, NONOYAMA Hiroto, MORIMOTO Tomoyuki, YAMAUCHI Kohei

Presented by Nakagawa Canal Video Archive Project (ARToC10 grant-aided project)

Under auspices of City of Nagoya, Nagoya Port Authority, Nagoya Urban Institute of the Nagoya Urban Development Public Corporation

Sponsored by TAIHO Co., Ltd

Assisted by Rowing Center of Port of Nagoya, Nagoya University of Arts and Sciences

不完全な「鏡」、そして静かな「賑わい」- 茂登山清文

運河に沿ってほどよく残された木立と、立ち尽くす人々の影を透して、映像が視野にはいってくる。水面に映ったその反影、たえず表情を変える河面、対岸の工作物から名駅の高層建築まで遠近をなして不規則に立つビルの灯り、そして暗闇、それらが一体となってつくりだす空間に、私たちは歩み入ることになる。
waltz は、3日にわたって中川運河に設置されたサイトスペシフィックな映像インスタレーション作品である。木材を筏のように組んでフロートをつくり、その上にコンピュータとプロジェクタ、高さ4メートルのスクリーンを載せ、河底に係留した。それが6基(6艘かな)、長良橋の少し上流にピクチャレスクに設置された。
映像のモチーフは、人物と水面。どちらもカメラを固定して撮影されている。人物は半身像でまっすぐにこちらを向いていて、水をすくって飲むような仕草も折りこまれている。その振る舞いは、どこか祈りとも似ているようだが、上げた腕が顔を隠す。中川運河に縁のある人たちをモデルに撮影したという。
水の映像は、中川運河を比較的近くから撮影している。海の延長でもあるこの運河には流れがないために、水面は穏やかだ。そのなかで風と水上交通による細やかな波と、それらの岸や船からの跳ね返りが、幾つかの方向性をもつ波となって干渉し、スクリーンに繊細な水模様を描きだす。
絵画の起源のひとつとして、水が鏡として機能したと言われる。広い水面に望んで見晴らす夜景は、とりわけ美しいのだが、waltz では、映像に撮られた水が実在する水に反射する。その反影のありさまは、時々刻々と変わる水面のゆえに単調なものではなく、時に鮮明に、時には揺らぐ。人物像もまた、ここでは見る人を映しだす鏡のように存在している。水が完璧な鏡としては機能しないのと同様に、映像のなかの人物とそれを見る人との関係もまた対称ではない。フロート自体も風で微妙に移動し、スクリーン相互の位置関係を変える。この作品は、運河という場所の魅力をひきだし、変幻で繊細な視覚体験を提供してくれる。さらに付け加えるなら、顔を覆う仕草は、それと向き合う私たちに、闇を見るよう、あるいは目を閉じるよう示唆しているかに思える。見えないこと、見ないこともまた、視覚を問う根源的な体験なのだろう。
中川運河に「にぎわい」を、というのが、ARToC10の基本となる姿勢のひとつだ。とはいえ、日常的にあるいは継続的にそれを創りだすには、有効な施策と、インフラも含めた整備が必要になることは言うまでもない。そもそも「にぎわい」とは一体どのようなものなのか。waltz を通して、それをイメージし、思考することができた。多くの人が河面に向かって思い思いの姿勢で、長い時間を過ごし、長良橋の上では、足を止めて風景を見やる人も少なくなかった。それは祭りとは異なる、静かな風景だったが、作品を見る人の心は、「賑」の原義のごとく、貝ならぬ貴重なものでみたされていたのではないだろうか。

もとやま・きよふみ(名古屋大学大学院情報科学研究科教授/視覚文化)